【Google for Jobs】今後の求人サイトのあり方を考える
はじめに
2019/01/23(水)にGoogle for Jobs(Googleしごと検索)が日本の検索画面にも表示されるようになりました。Indeedの台頭、GfJの上陸など何かと動きの多い人材業界。私自身人材メディアのWeb担当者として胸のざわつきを感じております。今回は当事者として今後求人サイトはどうあるべきかというテーマについて書いていこうと思います。
※話さないこと
そもそもGfJとは的な話/マークアップのやり方的な話/どうやったら上位表示されるか的な話
海外の人材系企業の事例
既にいくつかの国と地域ではGoogleの検索画面にGfJが実装されています。
事例として世に出ているものは少ないのですが、以下ご紹介します。
ZipRecruiter - Google の新しい求人情報検索機能を活用してコンバージョン率を 4.5 倍に増加
https://developers.google.com/search/case-studies/ziprecruiter-case-study
・ほかの検索エンジンと比べると Google からの検索はコンバージョン率が3倍
・JobPosting の実装後は実装前よりも Google のオーガニック検索のコンバージョン率が 4.5 倍に上昇
・Google 検索から求人ページに訪問したユーザーの直帰率はほかの経路からより 10% 低い
・非ブランド検索(サイト名やサービス名を指定しない検索)の月間アクセスが 35% 増加
ZipRecruiterは求人アプリに力を入れたスタートアップです。スタートアップといえど、アプリのMAUを見るとGlassdoorやLinkedinなどのサービスに引けをとらない規模を誇ります。かなりの大規模人材サービスといえるでしょう。
GfJ経由ユーザーのCVRの高さ/直帰率の低さ
GfJと似た使用感であるIndeed経由のユーザーも、Organic経由のユーザーよりもCVRが高い傾向にあります。大手人材メディアであればIndeed経由のユーザーに対して個別にレート改善の施策を打ったりしているケースも多いですが、そういった施策がそのままGfJにも当てはまることは大いに有り得そうですね。直帰率が低いのも大きな特徴と言えます。特に求人メディアの場合は、自社サイトにランディングしてもらってからいかに他の求人へ遷移してもらうかも応募獲得のために重要な観点となります。
一般的に人材メディア側の目線からすると、自社メディアを介さずにユーザーを直接求人原稿へ飛ばしてしまうGfJは厄介な存在として捉えられる場合が多いかと思います。
しかし、ZipRecruiterの場合はGfJの利点をうまく利用しているようですね。特に海外のSERPsを見てみると、求人検索でよく出てくるのはIndeedやGlassdoorといったメディアです("SEO Jobs"で調べると露骨に8枠も出てきたり、、)。アプリに主戦場を置いていることを考えると、ZipRecruiterはGfJからの恩恵を受けやすい立場なのかもしれません。
旅行業界における事例
旅行業界ではかなり早い段階でGoogleFlightや旅券予約、ホテル検索などの機能が検索画面に実装されました。人材業界よりも早くGoogleが進出した業界を俯瞰することで、GfJ対策に活かせる示唆を得られるのではないかと思います。以下いくつか参考となる事例とともに考察を記載します。
旅行分野で続伸するグーグルやフェイスブックにどう対処するのか? 航空会社がすべき顧客との関係づくりを考えた【外電コラム】
https://www.travelvoice.jp/20180204-102364
エンゲージメントを強め、ブランド力を高める
"GoogleやFacebookのフィルタリングなしに顧客とつながるのが難しい"とヒヤヒヤしていますね。こちらの記事では企業のブランド力を高めることが重要とされています。
"GoogleやFacebookを頼らず直接自社ブランドを選んでもらうため"、というのもそうですが、各プラットフォーム上でユーザーに選ばれるためにも企業のブランド力は重要でしょう。同じホテルを複数のサイトから予約できるとしたとき、最終的に選ぶ理由は"このサイト知ってるから"とか"このサイトなら安心だから"など、ブランドに対する印象が大きいのではないでしょうか?
こればGfJに当てはめても同様のことが言えるかと思われます。特に、「あのブランド企業で働きたい」等のニーズがなく、"給料が高い"、"労働時間が短い"などの条件面での検索ユーザーの場合、原稿を掲載しているメディアのブランド力はユーザーの意思決定における大きな1要因になるかと思われます。
GfJ上に求人媒体の名前をすべて並べた際、自社媒体がユーザーからどのような印象を抱かれるか今まで以上にシビアになる必要がありそうですね。
スカイスキャナー、KAYAK、Googleフライト-航空券検索サイトの使い方
https://soratabi365.com/2018/01/02/air-ticket/
旅行者はインサイトを分けてサービスを利用する
脱線しますが、Googleのホテル検索しばらく見ないうちにめちゃめちゃ進化してますね、、、びっくりしました、、
▽「東京 ホテル」での検索一覧
▽ホテル詳細画面
もう(ホテル探すならGoogle以外要ら)ないじゃん、、、
一覧のUIから詳細のリッチさから、、こんなんやられたら自社メディアを持つ側からするとたまったもんじゃありませんね、、一説によると、GoogleFlightなどの登場でOrganicが7割まで落ちた旅行系メディアもあるんだとか、、
自社媒体にしかない情報や機能を持つことの重要性
記事ではスカイスキャナー、KAYAK、GoogleFlightをそれぞれ例にあげています。
・休みや予算は決まってるけど旅行先が決まらないときはスカイスキャナー
Googleはシンプルですが、それとは違い、視覚的にユーザーが選択しやすい仕様になっています。
・往復の組み合わせ別に料金がわかるKAYAK
一覧性は当然Googleも優れていますが、かゆいところに手が届く機能と言えます。
・遅延情報まで予測できるGoogleFlight
こちらはプラットフォーマーであるGoogleのビッグデータを用いた強みと言えます。
媒体ならではの強みを持つことはGoogleのプロダクトと共存するために必須と言えるでしょう。当然、UIやデザインなどで差別化を図ることもそうですが、自社にしか存在しないコンテンツを尖らせ拡充していくことも有効です。
リクルートジョブズのTOWNWORKが良い例かと思いましたので以下解説します。
選択肢を絞る重要性
少し前ですが、コロンビア大学経営大学院のシーナ・アイエンガー教授は、人間は選択肢の数が多すぎると選べないということをスーパーマーケットで実証し話題となりました。ジャムを大量に陳列するよりも、数を絞って陳列したほうが売上が上がったという実験結果が有名です。
"多すぎて選べない"、"とりあえず良さげなのいくつか紹介して"そういったユーザーのインサイトにうまく応えたのが、TOWNWORKアプリのジョブーブの機能です。
ジョブーブというキャラクターの簡単な質問にいくつか答えると、ユーザーに合いそうな求人をいくつか表示してくれるという機能です。
一覧性に優れたGoogleFlightやIndeedが台頭する中、とりあえずサクッと探したいというユーザーのニーズを抑えた非常にユニークな機能と言えるでしょう。
求人メディアを運営する企業が考えなくてはいけないこと
媒体ならではの機能/コンテンツ拡充は必須
極端な話ですが単純な絞り込み/一覧機能はどの業界においてもGoogleに代替されていく流れとなるでしょう。これはプラットフォーマーであるGoogleが取る当然の戦略と言えます。
旅行業界でいうスカイスキャナーやKAYAKの例のように、”この媒体だとこういう絞り込みが出来て便利”、"この媒体だとこんな情報がある"など、媒体に尖った何かをもたせる必要があります。
詳細ページ(求人原稿)改善
GfJの画面がSERPsの1ページ目にデカデカと掲載されることで、検索経由の一覧ページへのランディングよりも直で求人詳細ページへ飛ばされるケースが増えるはずです。
そうなった際、
・いかに求人詳細ページでCVしてもらうか
・いかにサイト内を回遊してもらえるようにするか
等、詳細ページ改善にかけるウェイトを増やしていく必要があります。
純粋想起の重要性
同じような求人が複数並んだ際、どの媒体から応募しようかという判断は媒体の認知度や印象によって下される可能性があります。特に大手メディアの場合は、他メディアと違いどのような点が強みとなるのか明確にした上でのブランディングが重要となるでしょう。
▽湯田の所感
まだまだ日本では始まったばかりのサービスですので、今後もいろいろな仮説検証が各メディアで行われていくものと思われます。 おそらく求人検索するユーザーの挙動も変わるのではないかなあと思います。例えば、
・基本的な検索はGoogle for jobs/Indeedでやる。
・そのあとの比較検討は別途検索を通じて情報収集をする。
・最終的に応募するのは信頼できる媒体から ※こんな面倒なことするか、、?
など
何にせよ、既存の求人メディアに対して絞り込み検索を期待するユーザーは減るのではないかなと思います。そうなった際、自社メディアが存在する理由を改めて明確にする必要がありそうです。もしかしたら事業の軸を別にずらすことなのかもしれませんし、どこかの領域にエッジを尖らせる事かもしれません。私も市場的にまさに当事者ですので、ヒヤヒヤワクワクしながら変化を楽しみたいと思います笑
長文駄文最後まで読んでいただきありがとうございました。
こちらのブログでは直近で
・各大手人材メディアのマークアップ状況
・GfJ上での順位最適化/クリック率最適化
など考察をアップしていく予定です。
私自身まだまだ勉強中の身ですので、是非コメントなどでご意見いただけますと幸いです。
Twitterもやっていますのでよろしければフォローお願いします。
▽参考記事
グーグルがオーガニック検索トラフィックを減らしている!? いまSEO担当者は何ができるのか?
https://webtan.impress.co.jp/e/2018/08/06/30067
検索エンジンの流れ:
・アンサーボックスの多様化
・求人、航空便、製品といった検索分野への進出
・オーガニック検索から送信されるクリックの総数減少
・オーガニック0件のSERPS
対策案:
・ブランド名に関するものの検索量を増やす
・最適化対象のプラットフォームを増やす(YouTube、画像検索、SNS)
・強調スニペットなどGoogleの表示するコンテンツに最適化する
Google、求人検索を11か国に拡大。コンバージョン率4.5倍の転職サイトも
https://www.suzukikenichi.com/blog/google-expands-job-posting-to-more-countories/
媒体だから提供できる価値とは何か?
転職アフィリの危機!Google for Jobsが日本でリリースされる影響は?
https://yuukivp.com/column/5300/
アフィリエイターはネガティブKWで対策するからまだ未来がありそう、、
「Google for jobs」で変わる日本の転職市場
http://game-of-jinji.hatenablog.com/entry/google-for-jobs
・求職者の立場からすれば、複数のサイトを確認し情報を自分なりに精査していくという面倒な手間が一度で済むので、こんなに楽なことはありません。
・大手求人サイトを運営している企業にとっては、ビジネスモデルが成り立たなくなる危険性があり、逆に弱小サイト運営会社や、採用に苦戦していた企業にとってはチャンスが拡大します。
Google人材募集が求人情報サイトを駆逐する理由
https://www.lifehacker.jp/2017/07/170716_why-google-for-jobs-will-kill-jobs-sites.html
長期的にはGoogleが転職市場を押さえようとしているという話